助けておっぱい。

連休前の追い込みと云う事ででふーらふら、になるまで飲み屋で精神的接待セクハラしてというかされてというかでほんとふーらふらと帰ってきた。玄関をそおっと開けるとそこには三つ指ついて迎える奥さんがいて、定番のえろちっくな究極の選択を迫ってきたが僕は何も云わず・・・などという妄想が保持できないほどいつもどおりの誰も居ない家である。先刻までの喧騒の余韻が耳鳴りのように脳裏に響いて凄い空しい。実際私を出迎えてくれたのは郵便受けに挟まれたデリヘルのピンクチラシだ。可愛らしい女の子が男物のシャツを着て半裸で座って「あなたの時間を私に・・・」とうたっておる。うわあ、とまたも部分的解釈による妄想が膨らみエロさが脳髄とか色んな髄を走って躍ったのだが、直後躍った自分を俯瞰してまたむなしさを加速させ軽く絶望の淵を覗いていた。さっきまで焼き鳥の皮(皮って何かエッチだよねえ、とか云うネタ振りは今思うと男として恥ずかしくないか?などと理解し今またへこむ)つまみつつ色んな意味で敬愛する女傑先生や後輩の女の子としてたおっぱい談義は何だったのかなぁ、と一寸前の現実を今に擦りあてて悶え愉しむウブを装いつつ変態な感じの私ですが、今日も恥ずかしながら帰ってまいりました。へへへっ、もー何が何だか判らないけどまあいいや、後二日もすれば束の間とはいえ黄金という安っぽい名前の自由を味わえるのだ。新しい機材買いに行ったり、映画みたり、徹ゲーしたり・・・。はっはっは、そうだ自由だ。明後日になりさえすれば。だから今日はもう何も考えず牛乳飲んで寝ちまおう。就寝前の牛乳は安眠効果があり胃にもよいんだぜー。と台所にコップを取りに行ったのが二時間前。そこで僕は出会ってしまった。Gとかゴッキーとか、はてまた俗にゴキブリとか云われるあの野郎に。

万物の霊長と叫ぶも異議を挟まれぬ我らヒトがただ殺す事のみに専念すればその本懐を妨げるものなど何も無い。永遠に通じ合わぬ真なる狂気を生じたヒトの前に残るはただ一つ。それは累代の生の残滓であり、またの名を死という。戦いを覚えたヒトだけが戦士となり、生き残った戦士のみが死をみつけ、死を恐怖し、恐怖と戦う。こうしてヒトだけが戦い続ける。

台所に振りまかれた殺虫成分を洗剤と消毒液でふき取ってまわり、息も絶え絶えとGの這いずり回った後と没した場所を念入りに消毒し、遺骸を厳重に梱包して破棄する。何も見なかった、何も無かったと思いたいんだ。Gなんて見てない、と念じながらGの痕跡を消さんと奔走する。奴のいた場所近辺を長袖長ズボンに靴下スリッパ軍手にゴム手袋、片手に毒ガス噴霧器と武装し恐々と探索してみたが他のGは居ない。だが私はそれでも怖い。今見えないだけで、机に置いた湯のみの陰にGが居るかもしれない。積み上げた資料にGが挟まっているかもしれない。照明を落としたらGが冷蔵庫の裏から這い出てくるかもしれない。いやそもそも照明を落とそうと手を伸ばしたスイッチにGが居るかもしれない。今見えない所はどこも信じられない。怖い。怖い。見えない所でGがいそうにないのは女の子のおっぱいが築く谷間だけだ。そこで眠る事が叶わぬなら私は連休中も会社に行くしかないんだ。誰か助けて、助けておっぱい!