背中の向こう

しゃっとして皺のみえぬ紺の制服に身を包み
背筋をピンと張ったひょろ長い20代後半の店員が
バレットガールズという、銃で撃つと女の子の服が弾け飛ぶ
世界平和を夢見る我々にとって夢のようなゲームを購入した私の
くたびれた背中を隠しきれない、くたびれて薄くなったシャツへと
押し殺せぬ嘲笑をぶつけた。
私は思った。
オレがお前の歳の頃はもっとちゃんとした仕事してたよ。
お前はもうオレみたいにはなれないよ。
と。
ああそうか。
私はもう彼のようにはなれないのか。
私が彼の背中を見る事はないのか。


しかし彼は私の背中を見ていたいのだろうか。
そう思い、とっさに振り返ってみると
彼は目線を逸らすかのように私に背を向け
レジの後ろにあるパソコンへと手をやった。


何の変哲も無い背中であった。