眠れ

友人がとある病気をして、自宅療養している、筈だったのだが何故か制作作業をしてた。



命に関わるものでは無く、2週間ほどきっちり横になっていればそれだけで大した治療もせずに殆どのケースで治る病気らしい。まあ厄介な病気じゃなくて何より、と思っていたら、予想外の問題があったよう。

彼の病気は酷い頭痛のみが症状なのですが、ちょっと横になるとそれだけで一時的に痛みがすっかり引くそうで。それ自体は非常に良い事だが、症状が頭痛のみという事は「痛みが引くと健康体と変わり無し」という事になる。日頃時間に追われるいい大人が痛みも無く健康な状態でただ横になるなんて事出来る訳も無く、当然動き回ってしまう。動いているとまた頭が痛くなる。また寝る。暇を感じて動き出す。以下繰り返し。

そこで、何が問題になるのかというと、治療法だ。「横になっているだけで治る」というのは、安静にしていれば自然治癒するという一般的な解釈をしては駄目らしく、この病気に関しては「横になるのが治療法。横にならないと治らない」という意味なんだそうで。「横になっていると頭痛も治まり治療も滞りなく進むが横になっている間は健康体そのものなので横になっていたくない。」という軽いジレンマに陥るらしい。

骨折などの外傷に近い感があるけども、骨折の場合は物理的な障害が前提にあり、特定の行動自体を阻害されるというストレスはあっても、行動の発起とその阻害が常に切り替わってループしてしまうようなジレンマは無い。考えてみればかなり質の悪い病気だ。ジレンマの件で笑いかけもしたが、その精神的な辛さを想像して寒気がした。

柄にも無く労わりの言葉をかけていると、得意げな顔で一言。「この病気の面白いのはなあ、横になっていないと、というのが寝ていないと、という意味じゃあなくて本当に横になっていないといけないという所なんだ。地面に対して平行になっていないと治らないんだって。」いや珍しくて面白いけど別に面白い所なんて探さなくてもいいんだって。

どーもそれを言いたいが為に来ていたようで、さっきまでの憐憫の情が一気に吹き飛んで何だか無性に腹が立った。