透る。

久々家に帰ってきて幾星霜。具体的に言うと三日/一週間位。出掛けに本日の夜半過ぎからお天気下り坂ーとお天気情報が流れてきたので、主無き窟として形無き者が跋扈し易く瘴気が滲み出てしまっている室内を今のうちに浄化しておこうと、天風来々ーと霊幻道士風に叫びながら窓を開け放して作業場に行った。



風と共に去りヌ。とか何とか。隔たれた空間の中で形成す固定化された異質さはフラスコの中で育まれたホムンクルスの様なもので、外気によって現実における真なる普遍である知覚外の領域へと溶け込む。人に安息をもたらす領域を生み出す外壁は、そこに出来る影の内に闇に潜めく鬼を生み出す心の壁でもあるのだろうが、連綿と繋がる大気の外輪を内に通され、世界に曝されたその部屋は何も無く、ただの小さく、狭い部屋である。そこには何者も居ない。映る筈の自分の影すら見当たらない。空虚である。切り立った岸壁に居るような、何もかもが霧散し意識が保てないような透徹さだが、その淵にて遠くを思索するのは最小の自分が充ちているような感覚があって、妙に心地よい。今はそんな安い自由を味わいながら、商売女の様に冷たく総てを受け入れる布団に顔を埋め、まどろみ夢をみている。